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会社で出したアウトプットの草稿。
最終的に文量をこの三分の一くらいに削りましたw。

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ツアーには他のメディアの方も同行されていましたので、業界の動向の話や技術話なんかはそちらの記事に譲るとしまして、私の方では"シリコンバレーで働く"ということについて、現地で見聞きしたことを元に書いてみたいと思います。
(私のメモに基づいてますので、若干おかしなところがあるかもしれません。そのあたりについては、"大体こういうイメージ"というところでお願いします。)

■シリコンバレーとは何ぞや

ガイドさんの受け売りの部分もありますが、基礎的な所から。

そもそもカリフォルニア州自体が日本の国土よりも面積が広く、一口にシリコンバレーと言っても人によってだいぶ認識にズレがあるようで、広い意味で、近年IT関連企業が進出しているエリアまで含めると、100キロ圏はゆうに超えてしまうようです。

シリコンバレーの近くの都市で最も栄えているのは北方にあるサンフランシスコで、都会が良いとここからオフィスへ通勤している人もいるそうですが、近郊の住宅価格は平均で80万ドル(全米の平均は20万ドル台)を超えていて、加えて管理費や固定資産税も乗って来ますから、かなり高いと言わざるを得ません。
住んでいる人の特徴としては、独身で、Profession(専門職)の人が多いことが挙げられ、同性愛者の比率は、全米でも極めて高いそうです。
人種で見ると、4割がアジア系で、シリコンバレーの企業でも、白人よりインド系や中国、韓国人の比率が高いところも珍しくはありません。


■訪問した企業1:
Vizmedia社:小学館の子会社として出発。今は講談社も資本参加していて、日本の漫画・アニメの翻訳、出版、グッズ監修などの権利ビジネスを手がけています。

オフィスはサンフランシスコ市内。元々映画館だった建物をリノベーションした物件。



ついでながら、ここからそう遠くないところにルーカスフィルムがある関係で、
スターウォーズの第一作の試写がここで行われたそうです。

中の様子。



社員数が増えて来て、これでも狭くなってきた、という感覚だそうです。そうかなぁ。



漫画・アニメの会社らしく、オフィスの至る所に、日本の漫画キャラが。



注目すべきは、休憩用の部屋の壁の掲示板。



州法その他で定められた安全、バリアフリー、時給に関する取り決めなど「従業員が知っていなくてはいけない」ことをきちんと告知するのも、会社の義務の一つだそうです。
こういう細かいところで、employerとemployeeの力関係というか、日本とアメリカとの考え方の違いを見て取ることができるような気がします。
ちなみに、最低賃金は9.14$/hでした。日本円で行くと、だいぶ高いように見えますが、税金や物価を考えると、どうなのでしょう。
(私がサンフランシスコ市内で24.99$の衣料品を買ったとき、税金込みで27.11$でしたので、消費税率が8%ちょっとの計算ですね。)

日本人の従業員も随分多いようですが、採用はどのように行っているのでしょうか。
人事担当の方によると、必要なポジションが出て来た時に、採用活動を行うそうで、job description(仕事内容その他を書いたもの)にマッチした人にinterview(面接)を行うそうです。人を探す所までの作業は概ねwebで行われという話で、人材関係のwebサービス(転職支援、求人サイト、SNS的な機能を併せ持っていると思われる)が日本以上に発達していることが伺われます。
あとは、近隣の大学(たとえばStanford)に、Publishing Courseとか、専門的な専攻の学科もあるので、そういうところからも引っ張ってくるとか。

面接は、現場の担当者・同僚となるべき人間、そして上司になるべき人間と、3〜4回行われるようです。
人事担当者も同席はしますが、あくまでそれは手続きや制度、保険関係の説明のためだけであって、人事が採否に関わることは一切ありません。

さらに、日本で聞いたことがない話としては、前職の同僚や関係者に照会する、ということでしょう。
応募者について、仕事ぶりはどうだったのか、スキルは、キャラクターは、と、数名に聞くそうです。
ここで妙なトラブルが起きたり、ウソの報告をされた、ということはとく起こらず、米国人の「転職」への考え方がここでも見て取れます。

これらはごく一般的な米国の採用方法を踏襲していますので、日本のように人事担当者が配属を考える、ということもほとんどありえません。

さきほど人事担当の役割について書きましたが、会社側がいかに良い福利厚生のパッケージを提示してあげられるかが、リクルーティングの成否や、どれだけ長く勤めてもらえるかの重要なポイントになるようです。
日本のように「国民皆保険」ではない米国では、いかにいい保険のプランを揃えているかが、受ける側が会社を選ぶ上での重要なファクターとなります。
米国では持っている保険によって通院できる病院すら変わり、女性であれば出産時の自己負担分に数万〜数百万の差が出る場合もあるようですし、配偶者や子どもにも適用されるのかどうかで大きく負担が変わって来ますから、応募者がよい保険を用意しているところを必死で探すのもわかります。

では、採用される人には、どのような共通点があるのでしょうか。
この質問について、人事担当の方は、
ずばり「柔軟性」と言ってました。すなわち、growing painsをexcitingと捉えられるかどうか、という点だそうです。
ベンチャー企業や、業界の変化の大きいIT企業などでは、とかくやるべき仕事に対して会社インフラが付いて来ないことも多く、
自分の工夫でなんとか乗り越えなければならないことも往々にしてあるわけですが、
そういうことも含め、ポジティブに捉えられる人材、ということですかね。
これはそんなに日本人・日本企業でも違和感ないのではないでしょうか。

ちなみに週40時間働きさえすれば全く問題ないので、
社員の方はみな17時には家事のために帰って行くそうです。


■訪問した企業2:
VMware:仮想化技術、仮想化ソフト開発。
"4年間全くリブートしていない"顧客もいるというここのテクノロジーは、「Fortune」誌が選定する100企業のすべてが採用しており、成長も毎年50%の伸びを記録してるそうです。

こちらはオフィスが非常に感動的だったのですが、撮影は一切禁止とのことだったので、帰国後、美人広報Melindaさんに素材を送って頂きました。
こんな感じ。



このあたりの企業では、会社をオフィスとは呼ばずにキャンパスと呼ぶそうですが、まさにそういう雰囲気です。
昨年完成したばかりのこの"キャンパス"は、"森の中"をイメージし、既存の植生をそのまま活かし、新たに植えたものは水が少なくても育つものばかりで、
建物に使用されている木材は全てリサイクル材を使用。
トイレの水や、敷地内で出たゴミも全てリサイクル。徹底しています。

しかし驚いたのはこれだけではありません。
食堂で出されるメニュー、食材はここから150マイル圏内で穫れたオーガニックものだけを使用、シーフードも、モントレーにある水族館から、環境に影響がない、と認定されたものだけを使用。
内容は社員からのリクエストで、釜焼きピザ、インド料理、Sushi(日本人の寿司職人を雇用!)、さらにはコールドストーンの上で作って出してくれるというアイスクリームまで…。
職場に用意してあるスナック類も、もちろん健康と環境に配慮したものばかりを取り揃えてあるとのことでした。
我々が説明を受けた会議室にも、新鮮なフルーツと飲み物類(コーヒーはホットもアイスもDecafも揃っていた)がありました。

これらの驚くべき環境に加え、ハーバードやMITの近くにオフィスを構えて優秀な人材をリクルーティングし、毎週50~100人が入社してくるということなので、コストももの凄いんだろうと思いますが、そのくらいしないと、生き馬の目を抜くこの業界で他社に先駆けて優秀な人材を採り続けることは困難でしょうし、従業員に健康で長く勤務してほしいということと、環境に配慮するという発想を徹底した仕掛けだそうです。

実際に働く日本人の方によると、「全てが自由。出社してもしなくても、結果さえ出せば何も言われない」、とのことでした。
受付をはじめ、バックオフィス的な意味での営業時間はあるようですが、開発関係の従業員に関しては、労働時間のルールはまったく関係ないようです。


■訪問した企業3:
hp:言わずと知れた老舗IT企業。VMwareと同じく、パロアルト市に所在してます。

現地の日本人の方にお話を伺ったのは、Executive Briefing Centerという、商談や視察などに利用される施設。
担当の方によると、日本企業の視察も随分多いそうです。

こんな感じで、商談の合間に、食事をしながら歓談。当日は、ドイツからのお客様がお見えでした。




建物は大小さまざま会議室と、hp製品のショールームになっています。




hp社といえば世界的な巨大企業ですが、
日本的な感覚からすると、ドライに見えがちな米国企業の中でも社員を大事にすることで知られています。
(もっとも、前会長がそれを覆すことを行って有名になったりもしたのですが…)
ほかにも"決定はできるだけ現場に近い者がすること"とか、"簡潔明瞭に、方向性を決めたら部下に任す"といった、"hp way"という精神が息づいていることで知られています。(こういう経営の話は、おそらく書籍がゴマンとあると思います…)

今回案内して頂いた社員の方の話では、世界中どこへ行っても、"同じものを共有してるな"とか、"こいつはやっぱりhp社員だな"と感じることができるそうです。

それはなぜなのかと思い、研修の賜物なのか、それともそういったカルチャーに適しているような人物を採用でフィルタリングしているのか、と質問してみますと、
もちろん研修もあるし、意識的に教育として行っていることもあるが、やはり実践の中から、上司から部下へ、先輩から後輩へと受け継がれて行っている部分が大きい、との答えが返って来ました。

なるほどと思いましたが、反面、トップから末端に至るまで、同じ考え方から実行まで持っていくのは簡単にできることではないなと思いましたが、このあと私はその実例を見ることになります。

Executive Briefing Centerから車で20分ほどのところにある、hpの研究所。




いかにもミッドセンチュリーな感じの建造物ですね。




ここは世界に7カ所ある研究所のヘッドクォーター的なところで、hpが抱える600人の研究者のうち300人がここに所属しているそうです。こちらも内部は完全に撮影禁止ということで、受付にカメラを預けての見学となりました。

パーティションが高く、人の身長くらいありました。全般的に、情報漏洩を防ぐための管理が厳しいようです。博士課程の学生などを受け入れる際などにも、NDAはかかせないと言ってました。当然と言えば当然ですが。
(ホワイトボードに何やら複雑な数式が書いてあるのとかが見えましたが、漏洩も何も、私には全く理解できませんでした)

最近ではとくにネットワークやwebに関連する(あるいは発展して行くであろう)基礎技術も研究していて、数年で何らかの結果を出すべく、研究計画を立てているとか。
もちろん、研究がどう具体的な製品へと結びつくかも大事なのですが、製品を作るとき、使うとき、そして廃棄するときに、どのくらいのコストや環境への影響が出て来るのか、ということも重要なファクターとしているようです。

日本では青色ダイオードの発明に関わる裁判で、日本企業の、研究者の処遇の問題が近年クローズアップされていますが、こちらではどうなっているのだろうと質問してみました。
これについては、詳細はお答えできないが、金銭的なところはもちろん、研究に従事する人にとって、常に最高の環境が提供できるよう最大限配慮している、とのことでした。

さて、この建物には、創業者であるデビッド・パッカード(1912〜1996)とウィリアム・ヒューレット(1913〜2001)の執務室もありまして(こちらもお見せできないのが残念)もありまして、極めて簡素に作られた二人の執務室の間に通路があって、お互いが行き来できるようになっていたのもユニークでした。
そして、これがhp wayの"open door policy"だと説明されたのが、その執務室の、開け放たれたドアのウラ側でした。

このドアが、常に社員に対して開けられていた証拠に、開かっぱなしのドアのウラ側で何十年も陰になっていた部分が、執務室の床の他の部分と色が違うのですね。なるほど、これが実践というものか、と思いました。


■実際に現地で働いている日本人に聞く

さて、サンフランシスコに戻った我々は、渡辺千賀さんを司会に、日本でも非常に有名なIT系企業で実際に働いている方々のお話をお伺いしました。
(顔出し名前出しNGの方もいらっしゃいましたので、具体名はかかないこととさせていただきます。)

かいつまんで書きますと、

・個人主義が徹底している。隣のブースの人間が、爆音で音楽聞いたりしていても、皆気にならない。
・日本人的な感覚では"自己主張しすてイヤミ"と思ってしまうくらいアピールしないと、全くダメ。
・発言(レス)しなければ、同意したものと看做される。
・採用では、応募者の能力を徹底して見るが、年齢など、聞いては行けないとされている部分では絶対聞かない。
 →逆に言うと、若いとか、年配とかっていう概念がかなり希薄。
・米国も不況と言われているが、シリコンバレー界隈に限定すれば、業績も待遇もどんどん上がっていると言って良い。

というようなことでした。


■ツアーに参加された方々の感想
参加された20名強の方々に、全体を通しての感想を伺いました。
細かな差はあったものの、まとめると、みなさん共通して下記のようなことをおっしゃっていました。

・IT企業で働いているので、日本の企業の中でも比較的進歩的だろうと思っていたが、想像を超えていた。
・転職ということに対しても、全く抵抗がないし、長期間勤められる(=安定)ということを求めてもいない。
・だから、短期しか居られない可能性があったとしも、スキルが身に付く方がいいと考えていた。
・でも、ここまでの自由度の高さと徹底した福利厚生の背景を目の当たりにして感じたのは、
 社員へのアウトプットの期待の大きさで、実は社員にとってはそれってすごくストレスや、重圧もすごいんじゃないの?
・憧れはあるけれど、ちょっと怖い、とも思った。

なるほど、製造業界では世界に誇れる日本企業が数多くある中、人材の流動性もはるかにグローバル化しているITの分野で、日本人に染み付いた考え方や慣習を有る程度尊重しながらも、上記のような海外の企業とどう戦って行くのか、難しい問題だなということを改めて実感した次第です。

私がこれについて渡辺さんに質問したときの、「(会社の制度で)欧米の企業のおいしい所だけつまんで持って来ても、絶対うまくいかない」というコメントが心に残りました。