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入試の時、駅から大学へ向かう途中にあったその場所は、
まだ雪に覆われている空き地だった。

日々できあがっていく建物を横目に見ながら通学していたが、
ついに大学二年の時、そこに学校が移転してきて、
大学生ばかりだった僕の通学路に、学生服姿のひとたちが加わることになった。

それまでは比較的静かだった駅前からの道も俄に騒がしくなり、
あるとき、学生服に着られているといった感じの中等部の生徒とは似ても似つかない、
今風に言うならKAT-TUNかオレンジレンジかw、
というような風体の高等部の生徒の駅のホームでの破廉恥な言動を目にして以来、
どうしてもその学校には良い印象を持てていなかったことを思い出す。

その学校 -つまり早稲田実業- が、今日は満天下にその勇名を轟かせた。
中の人にとってはただ漫然と、大学へのモラトリアムとしてしか存在していないのか、
そんな風に思っていたあの私大付属校が、僕にすばらしい感動をくれた。

今年は職場でテレビがついているおかげで、
甲子園を毎日チラチラ見ていた。
毎年高校野球は決勝戦くらいしか見ないので、それほど詳しいわけではないが、
それにしても今年は劇的な試合が多かったように思う。
今年も僕の母校は出場できなかったが、地元・熊本の熊本工業もよく頑張っていたし、
とくに昨日の勝負のつかなかった決勝戦は感動的だった。
15回裏、早実・斎藤の、140キロを超えるボールの連続に、
クーラーの効いた部屋でだらだら見ていた僕にも、その気魄がビシビシ伝わってくるようだった。

そして、今日。
1点差に追いつかれた9回裏の2アウトで迎えた、相手チームのエース田中との勝負。
もう、舞台としては最高だった。
1000球にも迫ろうかという4試合連続の斎藤のピッチングは今日も衰えることを知らず、
投球で最後を締めた。
駒苫の選手達も、決して悲壮感はなく、野球をするのが面白くて仕方ない、といった風で、
笑顔で球場を去って行ったのが凄く印象的だった。

"夏の仲間にありがとう"。いや、いいキャッチコピーじゃありませんか。

そして、高校野球がそのひたむきさにおいて美しさが高まるほど、
プロ野球の闇が際立つような気がして、暗澹たる思いにかられたります。
まあそれはともかく、本当に興奮と感動をありがとうと言いたい。

おっと、ただいあーよかったよかったで終わらないために。
早実の斎藤はなぜ4連投しなければならないのか。 - 見物人の論理